一月句会
今の世やフェードアウトの餅あわい
日常の有り難きことよ餅あわい
テレビのみ空しく灯り餅あわい
人の難言うまいぞ今日初句会
釣りに似て坊主と言うや初句会
ふる年の札も旅路や道祖神
実朝忌
寒梅に尺八のみが揺らぐ風
蝋梅二句
蝋梅や閉じた月日の溶け始め
蝋梅や琥珀は虫の眠れるを
丹沢やチラッと白い雪の顔
鬼たちは霞の彼方豆の跡
水仙や六芒星の地天泰
曽我梅林
富士の白雲の白きや梅の白
述懐
長らうや遠い光と霞む影
二月句会
つちふるや鎌倉の空ただならず
くすみゆく近現代よ黄砂飛来
残響よつちふる街の在りし日々
あれあげようバレンタインの三ノ塔
苦き夜に糖分少しバレンタイン
バレンタイン透明人間の群れに
漆黒の中の光や雨の梅
昔飼ってたゆきちゃん。死んだというので
なぜかそれをそのままむしゃむしゃ食う夢
を見た。味もない。やがてそのゆきちゃんが
にゃあと声をあげた。永遠の命を手に入れた
のか。とにかく意味不明。
猫の日に猫を食う夢わからない
猫の不在その穴穿つ春の雨
稜線のその向こうにや残る雪
酒は弱く我が酒白く残る雪
大井町の句会
柴犬のわけ入る土手よ水仙花
水仙や自分探しの旅途中
山を越え土肥か熱海か早桜
十郎やなべてこの世の花の兄
太陽のたわわな枝やミモザの日
千村から渋沢丘陵を散歩した。 今年は辰年
なので、早くここに挨拶に行かなくてはと
思ってるうちに三月になってしまった。
龍の時間感覚では3ヶ月も一瞬のことだと
思いたい。
怠け者の地龍めでたき春もがな
三月句会
行きつけのサービスエリア燕来る
ツバメ飛ぶ鉄と石との生態系
燕来て何思うシャッター閉じた街
スポンジは土を知らないレタスかな
百円でエコバッグ濡らすレタスかな
ふさふさの葉もたおやかに春大根
忘れるな三一〇の春花火
金鉱か杉こもれ陽のミツマタは
桜咲く廃工場の追憶に
プレートは知らない家族花の幹
やりかけの数多くして花を見る
薄れ行く昭和は染井吉野哉
千囀の鶯点は気にしない
ジャパニーズ・フォーク・メタル
新年泥酔忍者大戦2023参戦
木枯しの蛙は風のメタル哉
一月句会
黄金の野辺を心や花野菜
初稽古鍵の爺さん呼んで来い
水仙のさら地は帰る人もなし
寄ロウバイまつりにて
蝋梅の雫に溶ける霙かな
びいと鳴く声は去年か鹿シチュー
226実朝祭吟行会プロモーション
義時忌にならず実朝祭かな
あの時のクーデターの日や春動く
土肥桜
雪残る道をはるばるとひ桜
土肥桜白は沖縄の血の薄さ
鹿児島紅という名の梅
赤き血の胸に咲くや鹿児島紅
あたたかい、丹沢今日も優しそう
言の葉の色をこのめの春動く
昼間来てあるじを知るや猫の恋
実朝忌吟行会
長閑さは実朝殿の願い哉
春動く富士演習の音遠く
熱海桜
久しぶりに熱海桜の猿回し
松田町河津桜
飛び込むやかはづ桜の紅の海
秦野水無川のおかめ桜
おかめ桜空は二ノ塔三の塔
祠
何の神のらムスカリの花盛り
黒田杏子追悼
狐火や春めき桜吹雪く頃
其角忌
其角忌や静かになったこまの恋
桜
工場のパイプの錆やふるざくら
どこへ行く闇夜の淵の花いかだ
散る花は消えて帰らぬ時を生む
夜桜に適度な闇を俺にくれ
三月句会
ぶら下がるは誰が身代わりぞ吊るし雛
磯遊びテトラの波もゆるやかに
枝垂れ桜ここは野球の国だった
潮干狩り寄り道なしのあさぼらけ
国道の脇も何やら菫咲く
人の血よさわげよ笑え桃の花
いにしへの言葉も添うや八重桜
遊ぶ子の声たのもしやチューリップ
山吹や秦野も名水の里なれば
藤
竹の子の季節や竹に藤の花
藤垂れて四十八瀬は滝の裏
藤咲いて心の鬼も消えればな
藤は森を傷めると聞いて
藤波も過ぎたる山や藤津波
黄砂
つちふるや雲と見まがう富士の山
四月句会
桜まじ隠居して知る言葉かな
「陸へ行こう」「もちょっと待って」むつごろう
山笑えたとえ地球は狭くとも
茅ケ崎の句会
ゴミ出しの空や埋もれし八重桜
イベントはまだ設営のうららかな
お咎めなし遊ぶ子供よ大岡祭
くずの芽の命の蔓よ星に満つ
小田原の吟行会
城の猿も固まる雨や松落葉
雨空の光集むるや蓮若葉
鯉のぼり風強ければ強く泳ぐ
少女らの小さな嘘よ聖五月
厚木の句会
撮影の犬は利口よ薔薇の園
分断や互いに黙の老いの春
足元は苔の花なり道祖神
LGBT法に
薔薇も百合も並べて立よ道祖神
高砂や雌雄同株の松の花
コロナ五類引き下げ
栗の花脱げば薫るや顔パンツ
加茂荘花鳥園
ふる蔵の影のゆらぎや錦鯉
花菖蒲おばさんになる庄屋の娘
五月句会
天花粉家父長の声騒がしく
竹の子や鍋小さくて真っ二つ
万緑や納戸の奥の三輪車
儚いというな未来も蛍飛べ
真竹の筍
五月雨の泥にまみれず真竹の子
じゃにさんも掘ることはなし真竹の子
六月句会
梅雨空に青を見せてよジャカランダ
てんと虫よ菜園の空は狭いかい?
田んぼは木がはえて山滴るばかり
終電の窓さみだれのみず鏡
紫陽花や細い水路に苔の屋根
噴水や水の女神の芸達者
平塚七夕まつり
七夕やうん十年後の二人連れ
時鳥の声も映すや震生湖
南風は何と読む
南風蠅五月蠅くて南風やばい
ハンチバック
泥は夢水栽培の蓮の花
裏垢も覗いてみたし蓮の花
Twitter終了
囀るなお前はもはや鳥じゃない
七月の句会
噴水の景色切り取られた笑顔
肉食わぬ人もあるらし夏の痩せ
蜘蛛の巣に朝日眩しい束の間の
七月に藤が咲いて
実もあれば葉もふさふさや夏の藤
八月終わりに藤がまた咲いて
誰あろう藤みの花は三度咲く
隅田川花火の帰宅難民という言葉を見て
難民はパリピのことか花火会
山々に赤を添えたり猿滑り
ひまわりや背筋を正す東向き
涼しさは瀧でなくとも砂防ダム
八月六日八時十五分
雲の峰平和は白い狐雨
嵐吹く波の小島や終戦日
嵐にも寄せ合う身あれ終戦日
旧暦やペルセウス座夜這い星群
受け入れよ無限の闇を夜這い星
牽牛の角を撫で合う逢瀬哉
止まらない時に願うや流れ星
旧盆
生きていたと過去になる日よ秋の風
夢の空を眺め
生まれ消える命の影や秋の空
アレチヌスビトハギ
アメリカも盗人ありて萩の跡
アメリカや宮ジ野になる萩の原
コスモスもイエロー多くなりにけり
ミモザに胡蝶の群がりて
秋ミモザ胡蝶羽化して春なれや
秦野たばこ祭にて
秋祭り秦野葉たばこエンドレス
秦野たばこ祭句会
昼顔や煙に消える小休止
出征で煙草覚えて夏の草
コスモスや廃材置き場知らぬげに
コスモスや風に波打つ光の粉
彼岸花火を面影に土手の上
秋祭り狐の面の夜はしゃぐ
すずちゃんは綱島で生れ、横浜で十七年、
秦野で一年ともに暮らした猫で、令和五
年の九月二十五日午前六時三十二分、眠
りに落ちるが如く安らかに旅立っていっ
た。
目開けたまま猫の仕事をはじめけり
秋色やかつて桜の咲いたとこ
鶏頭は葉にも茎にも血が通う
パパイヤの花も実もある季節哉
唐黍や丹沢の雲掃くような
日月は庚申塔の朝日かな
秦野は栗が安いので、栗の季節になると
毎日栗ご飯を作るが、栗の皮剥きは面倒で、
時間もかかる。これを時給に換算すると、
栗ご飯ってそんなに安くはないな、と思った。
皮剥きは時給千円栗ご飯
国道246は東京から来れば、トンネル抜
けてドーンと富士が見えて、松田から来れ
ば正面に二ノ塔三ノ塔のハート形の谷が見
える。
思えば秦野に住むのも道祖神の導きか、町
の至る所に道祖神塔を見る。表丹沢の真ん
中のこの谷は玉堂が山紅於染図の谷の如く
兌の卦を表すのか。
秋晴れやくぱぁと二ノ塔三ノ塔
十月の句会
一階は風の棲家か薄ら寒
廃屋や猫毛づくろう冬支度
朝露や我が影長く塗りつぶす
大磯
元勲の家反魂の秋の風
月に酔えば脱ぐ奴はいる七賢堂
大磯の句会
裏山は葛も光や吉田邸
バイパスの音秋風よ眼鏡爺
秦野の名物の足長きのこはナラタケといい、
他の地域でもさなざまな名前で呼ばれている。
ナラタケの仲間は地面の下で菌糸で繋がって
いて、山一つのナラタケが同一個体であった
りすることから、鯨よりも大きな世界一大き
い生物だとも言われている。
ナラタケにでっかい秋をみいつけた
富士山の雪定まらず暑い秋
もみじ葉に遅速あれども水の音
枯蟷螂の倒れ伏すとこ冬の薔薇
どぶろくにここは山麓雲白く
見に来てね色をいじらぬ冬紅葉
震生湖の秋
地滑りの跡ソーラーの秋日和
弁天の律の調べや風に波
秋思とは地のさけぶ声の閑かさや
潜龍の淵何もなく鮒を釣る
震生湖誕生百年俳句大会
初雪やいつか死を待つ塹壕に
冬桜それは終わりか始まりか
猟犬の脇目もふらず山の路
外苑の斧斤を遁る銀杏かな
寒い朝の目覚めも長い夢の続き
秦野短歌会解散と聞いて
猫の声も届かず和歌の年の暮
十二月の句会
残業の日々の終わりよ掃き納め
尺八は浄土の風や実朝忌
イルミネーション見に山に入る耶蘇祭り
秦野文化祭
秦野市や露店にぎわう文化の日
鹿サンド今はジビエの薬喰い
破れ蓮やそれでも垂れる蜘蛛の糸
破れ蓮の中や分け行く錦鯉
寄の谷の深さよ鹿の声
十一月句会
何食わぬ顔で歯磨く夜なべかな
破れ蓮や日が高くなり散歩する
行くべきか迷えり鹿の塞ぐ道
闇の夜はものウクライナの雪が降る
震生湖
地は裂けても紅葉は残り水鏡
東海大学のたべれっとであぶらげを食う
弘法山降りて腹鼓打つ狐かな
冬晴れやおもたん表尾根の道
葛葉川かえるでもなき落葉哉
櫟山鍋焼きうどんの中ボスか
十二月句会
金目鯛いづこの闇を見つめるか
しっかりと戸締りをして神の留守
丹沢は背が伸びたのか朝の雪
茜雲がサンタ帽子や耶蘇祭り
はかいしにかばねをつみの年暮れぬ